より詳しい研究報告 研究報告1 ウシ初乳中の酸性ミルクオリゴ糖~『3’-シアリルラクトース』におけるインフルエンザウイルス感染阻害効果の検討

【目的】

ウシ初乳中には、"中性ミルクオリゴ糖"と"酸性ミルクオリゴ糖"の性質の異なるミルクオリゴ糖の存在が知られており、とくにシアル酸やリン酸基が結合する酸性ミルクオリゴ糖にはインフルエンザウイルスに対する高い感染防御作用が機能としては推定されていたが、明確に実際のヒトインフルエンザウイルスを使用した実験は行われていなかった。本研究では、シアル基が結合した酸性ミルクオリゴ糖のひとつである3'-シアリルラクトースにおけるヒトインフルエンザウイルスに対する感染阻害活性を検討することを目的とした。

【方法】

ヒトインフルエンザウイルス(102 PFU/ml)と試験溶液(10,50,100ug/ml 3'-シアリルラクトース溶液)を等量混合し、37度・1時間静置したものをウイルス溶液とした。上清を除いたMDCK細胞と各ウイルス溶液を37度・30分間反応させ、MDCK細胞へのウイルス感染状態とした。ウイルス溶液を洗浄後、アガロース入り培地で被覆し、プラーク形成の為に2-3日間培養した。培養後、酢酸(v/v=5:1)と0.1%Amide Blackにより培地を染色し、プラークの計測数より3'-シアリルラクトースにおける感染阻害率を算出した。

【結果】

3’-シアリルラクトースは、濃度依存的なインフルエンザウイルスへの感染阻害作用を示した。特に100μg/mlの濃度においては、コントロール(3’-シアリルラクトースなし)に対し統計学的に有意な感染阻害作用を示した。

【考察】

濃度依存的な感染阻害作用が示されたことから、一定量以上の3'-シアリルラクトース存在下において、高い感染阻害作用を示すものと考えられる。シアル酸において、インフルエンザウイルスの外皮表面上のヘマグルニチンと結合し、感染を阻害することが確認されている。3'-シアリルラクトースにもシアル基が存在することから同様の作用により感染阻害を示しているものと考えられる。

【研究者コメント】

ウシ初乳中には、3'-シアリルラクトースが確実に含まれている。本研究の結果は、ウイルスの初期感染において、ウシ乳仔の呼吸器官および消化器官におけるホスト細胞への付着性が減少し、感染リスクを軽減させる「感染防御因子」としてのミルクオリゴ糖の生理機能の一端が確認されたことになる。これまで糖質科学の視点からは、ミルクオリゴ糖は乳腺内で誤って生合成されたアーティファクト成分であるという研究者も少なからずいた。しかし、本研究では乳児をバクテリア感染以外にも、ウイルス感染からも守るというミルクオリゴ糖成分の存在が実証され、初期の感染防御因子であることも確認されたことの意義は大きい。

東北大学
齋藤忠夫 教授

東北大学 齋藤忠夫 教授

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